自筆証書遺言を法務局で保管しよう!

自筆証書遺言を法務局で保管しよう!

法務局の自筆証書遺言保管制度について、行政書士の視点からわかりやすく解説します。難しく考えず、まずは最初の一歩を踏み出しましょう。


自筆証書遺言を法務局で保管しよう!
行政書士が教える最初の一歩


「遺言書を書きたいけど、公正証書は費用が高そう…」
「自分で書いた遺言書、無くしてしまったらどうしよう」
「家族に遺言書を見つけてもらえるか心配」


そんな不安をお持ちの方に朗報です。令和2年7月から、法務局で自筆証書遺言を保管してもらえる制度が始まりました。費用はわずか3,900円、紛失・改ざんの心配もなく、家庭裁判所の検認も不要という画期的な制度です。


この記事では、法務局の自筆証書遺言保管制度について、行政書士の視点からわかりやすく解説します。難しく考えず、まずは最初の一歩を踏み出しましょう。




1. 法務局の遺言書保管制度とは?


正式名称は「自筆証書遺言書保管制度」といい、法務局(遺言書保管所)が自筆証書遺言を保管してくれる制度です。


制度の概要


✓ 開始時期:令和2年7月10日
✓ 保管場所:全国約300ヶ所の法務局
✓ 保管手数料:3,900円(一度きり)
✓ 保管期間:遺言者の死亡後50年間(または遺言者の生誕後120年間)
✓ 利用対象:15歳以上の方


どこの法務局で保管してもらえる?


以下のいずれかの法務局(遺言書保管所)を選べます:

  • 遺言者の住所地を管轄する法務局
  • 遺言者の本籍地を管轄する法務局
  • 遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する法務局


ポイント:全国どこに引っ越しても、一度保管した遺言書はそのまま保管され続けます。引っ越しのたびに手続きする必要はありません。



2. 保管制度を使う5つのメリット


メリット1:紛失・改ざんの心配がゼロ

自宅で保管すると、火災や地震で失われたり、誰かに隠されたり、書き換えられたりする危険があります。法務局で保管すれば、そんな心配は一切不要です。


メリット2:家庭裁判所の検認が不要

通常、自宅で保管していた自筆証書遺言は、相続開始後に家庭裁判所で「検認」という手続きが必要です(約1~2ヶ月かかります)。しかし、法務局で保管した遺言書は検認不要で、すぐに相続手続きを始められます。


メリット3:相続人が全国どこからでも確認できる

遺言者が亡くなった後、相続人は全国どこの法務局でも遺言書の内容を確認できます。わざわざ保管した法務局まで行く必要はありません。


メリット4:遺言書の存在を通知してもらえる

遺言者の死亡後、法務局から相続人等に遺言書が保管されていることを通知してもらえます(令和5年4月から開始)。遺言書の存在が家族に伝わらないという心配がありません。


メリット5:費用が安い

公正証書遺言は数万円~十数万円かかりますが、法務局の保管制度はわずか3,900円です。しかも、保管期間中の追加費用は一切かかりません。


紛失の心配なし、検認不要、費用3,900円
これだけのメリットで安心が手に入ります!



3. 自筆証書遺言と公正証書遺言の比較


遺言書を作る方法として、自筆証書遺言と公正証書遺言があります。どちらを選ぶべきか、比較してみましょう。


項目

自筆証書遺言
(法務局保管)

公正証書遺言
作成方法 自分で手書き 公証人が作成
費用 3,900円 5万円~15万円程度
証人 不要 2名必要
作成時間 数時間~数日 1~2ヶ月
手軽さ ◎ とても簡単 △ 手続きが複雑
安全性 ◎ 紛失・改ざんなし ◎ 紛失・改ざんなし
検認 不要 不要
無効リスク △ 形式不備の可能性あり ◎ ほぼなし
書き直し ◎ 何度でも可能 △ その都度費用が必要
秘密性 ◎ 誰にも知られない △ 証人に内容を知られる


結論:まずは自筆証書遺言から始めよう


こんな方には自筆証書遺言(法務局保管)がおすすめ:


  • 費用を抑えたい

  • すぐに遺言書を作りたい

  • 財産や相続人がシンプル

  • まずは遺言書を作ってみたい

  • 何度か書き直す可能性がある




公正証書遺言を検討すべき方:

  • 財産が複雑(不動産複数、株式、事業資産など)

  • 相続人間のトラブルが予想される

  • 絶対に無効にしたくない

  • 高齢で字を書くのが困難


重要:まずは自筆証書遺言を法務局に保管し、後で公正証書遺言に作り直すこともできます。完璧を目指さず、まずは「遺言書がある」状態を作ることが大切です。



4. 遺言書を書く前に準備すること


いきなり遺言書を書き始めるのではなく、まずは情報を整理しましょう。


準備1:財産をリストアップする


□ 不動産

  • 自宅、土地、マンション、別荘など
  • 登記事項証明書で正確な情報を確認


□ 金融資産

  • 預貯金(銀行名、支店名、口座番号)
  • 株式、投資信託、債券
  • 生命保険、個人年金保険


□ 動産

  • 自動車
  • 貴金属、美術品、骨董品


□ 負債

  • 住宅ローン
  • 借入金


準備2:相続人を確認する


法定相続人を確認しましょう:

  • 配偶者(いる場合は常に相続人)
  • 子ども(養子、認知した子も含む)
  • 子どもがいない場合:親
  • 子どもも親もいない場合:兄弟姉妹


各相続人の情報を整理:

  • 氏名(フルネーム)
  • 生年月日
  • 現住所


準備3:誰に何を残すか考える


法定相続分にこだわる必要はありません。あなたの想いを自由に表現してください。


考え方の例:

  • 「自宅は配偶者に。預金は子どもたちで等分」
  • 「介護してくれた長女に多めに残したい」
  • 「お世話になった団体に寄付したい」
  • 「事業を継ぐ長男に会社の株式を」


注意:遺留分について
配偶者、子ども、親には「遺留分」という最低限の取り分があります。特定の相続人に全財産を渡すような遺言書を作ると、他の相続人から遺留分侵害額請求をされる可能性があります。極端に偏った分け方は避けた方が無難です。



5. 自筆証書遺言の書き方(基本ルール)


自筆証書遺言は法律で定められた形式を守らないと無効になります。以下のルールを必ず守りましょう。


絶対に守るべき4つのルール


必須1. 全文を自分で手書きする

  • 本文は必ず手書き(パソコン・ワープロ不可)
  • 他人に代筆してもらうのも不可
  • ボールペンや万年筆を使用(鉛筆は不可)


必須2. 日付を正確に書く

  • 「令和7年10月29日」のように年月日を特定
  • ×「令和7年10月吉日」は無効
  • ×「令和7年10月」だけも無効


必須3. 氏名を自署する

  • 戸籍上の氏名をフルネームで
  • 通称やペンネームは避ける


必須4. 押印する

  • 実印が望ましい(認印でも有効)
  • シャチハタは避ける


法務局保管用の追加ルール


法務局で保管してもらうためには、以下の形式要件もあります:


✓ 用紙:A4サイズ
✓ 余白:

  • 上部5mm以上
  • 下部10mm以上
  • 左側20mm以上
  • 右側5mm以上

✓ 片面のみに記載(両面印刷不可)
✓ ホチキス止め不可(クリップも不可)
✓ 訂正方法が決まっている(できれば書き直す方が安全)


シンプルな遺言書の記載例


遺言書私は、次のとおり遺言する。第1条 私の所有する下記の不動産を、妻 山田花子(昭和35年5月10日生)に相続させる。所在 東京都○○区○○一丁目地番 123番4地目 宅地地積 150.00平方メートル所在 東京都○○区○○一丁目123番地4家屋番号 123番4種類 居宅構造 木造瓦葺2階建床面積 1階 60.00平方メートル2階 50.00平方メートル第2条 私の有する○○銀行の預金の全てを、長男 山田太郎(平成2年3月15日生)に相続させる。第3条 前各条に記載のない財産については、妻 山田花子に相続させる。令和7年10月29日東京都○○区○○一丁目1番1号遺言者 山田一郎 ㊞




ポイント:

  • 不動産は登記事項証明書の記載どおりに正確に

  • 相続人は氏名と生年月日で特定

  • 「相続させる」という表現を使う(「譲る」「与える」より明確)

  • 第○条と番号を振ると整理しやすい




6. 法務局での保管手続きの流れ



遺言書を書いたら、法務局で保管してもらいましょう。手続きは意外と簡単です。


ステップ1:法務局を選ぶ(即日)


住所地・本籍地・不動産所在地のいずれかの法務局(遺言書保管所)を選びます。
確認方法:法務局のウェブサイトで「遺言書保管所一覧」を検索



ステップ2:予約する(1週間~1ヶ月前)


必ず事前予約が必要です。
予約方法:

  • 法務局のウェブサイトから予約専用ページにアクセス

  • 希望日時を選択(平日のみ)

  • 予約完了メールが届く


URL:https://www.legal-ab.moj.go.jp/houmu.home-t/



ステップ3:必要書類を準備する(1週間前まで)






書類

取得先

備考

遺言書(原本)

自分で作成

A4サイズ、余白確保

申請書

法務局HP

事前にダウンロード・記入

本籍記載の住民票の写し

市区町村役場

発行から3ヶ月以内

本人確認書類


運転免許証、マイナンバーカード等

手数料3,900円


現金またはキャッシュレス決済




ステップ4:法務局に行く(予約日)


必ず本人が出向く必要があります(代理人不可)
当日の流れ:

  1. 受付で予約の旨を伝える

  2. 本人確認

  3. 遺言書と書類の確認

  4. 手数料の支払い

  5. 保管証の受け取り(15分~30分程度)





ステップ5:保管証を大切に保管


「保管証」という書類が交付されます。これには以下が記載されています:

  • 保管番号

  • 保管した法務局名

  • 保管日


保管証の保管方法:

  • 自宅の金庫や重要書類と一緒に保管

  • 保管番号を信頼できる家族に伝えておく

  • 保管証を紛失しても再発行可能(手数料不要)





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7. よくある質問



Q1. 遺言書は何度でも書き直せますか?


A. はい、何度でも書き直せます。新しい遺言書を作成すれば、前の遺言書は自動的に無効になります。法務局で保管している遺言書を撤回する場合は、「遺言書保管の申請の撤回」という手続きをします(手数料無料)。その後、新しい遺言書を保管することもできます。

Q2. 財産が増えたり減ったりした場合はどうすればいい?


A. 大きな財産の変動があった場合は、遺言書を書き直すことをおすすめします。ただし、「○○銀行の預金の全て」というように包括的な書き方をしておけば、口座の金額が変わっても有効です。3〜5年に一度は見直すとよいでしょう。

Q3. 法務局に保管してもらっても、家族が遺言書の存在を知らなければ意味がないのでは?


A. 令和5年4月から「死亡時通知」という制度が始まりました。遺言者があらかじめ指定した人(相続人等)に、死亡後に法務局から遺言書が保管されていることを通知してもらえます。通知を希望する場合は、保管申請時に届け出ます。

Q4. パソコンで書いた財産目録を添付できますか?


A. はい、財産目録はパソコンで作成できます。ただし、各ページに署名・押印が必要です。また、通帳のコピーや登記事項証明書を財産目録として添付することもできます。本文(遺言内容)は必ず手書きです。

Q5. 70歳を超えていても自分で法務局に行かなければいけませんか?


A. はい、保管申請は必ず本人が法務局に出向く必要があります(代理人不可)。ただし、病気等で法務局に行けない場合は、公正証書遺言を検討してください。公証人が自宅や病院に出張してくれます。

Q6. 遺言書の内容を途中で確認できますか?


A. はい、いつでも確認できます。遺言者本人は、保管している法務局または全国どこの法務局でも、遺言書の閲覧ができます(モニター閲覧:1,400円、原本閲覧:1,700円)。

Q7. 法務局で形式チェックしてもらえるから、絶対に有効ですよね?


A. 法務局では形式面(余白、日付、署名、押印など)はチェックしますが、内容の有効性は保証されません。例えば「学歴と業務内容の関連性」のような実質的な判断はしません。内容に不安がある場合は、保管申請の前に行政書士に相談することをおすすめします。

Q8. 相続人が遺言書の存在をどうやって知るのですか?


A. 主に以下の方法があります:

  • 遺言者が生前に家族に伝えておく

  • 保管証を家族が見つける

  • 死亡時通知制度を利用(遺言者が生前に指定した人に通知)

  • 相続人が法務局で「遺言書保管事実証明書」を請求(相続人なら誰でも請求可能)



Q9. 遺言書を書いたことを公表したくないのですが…


A. 法務局保管制度では、遺言者の生前は本人以外誰も内容を見ることができません。秘密を守りたい場合に適しています。死亡時通知も、通知を希望しなければ行われません。

Q10. 費用3,900円以外に追加料金はかかりますか?


A. 保管期間中の追加料金は一切かかりません。ただし、以下の場合は別途手数料が必要です:

  • 遺言書の閲覧:1,400円(モニター)または1,700円(原本)

  • 遺言書情報証明書の交付:1,400円

  • 遺言書保管事実証明書の交付:800円




8. まとめ:今週末に遺言書を書いてみよう



遺言書は「完璧でなければ意味がない」ものではありません。まずは「遺言書がある」状態を作ることが何より大切です。

今日から始める3ステップ




ステップ1:今週末に遺言書を書く




  • 財産リストを作る(30分)

  • 誰に何を残すか考える(30分)

  • A4用紙に手書きする(1時間)



所要時間:たった2時間です!

ステップ2:来週中に法務局の予約をする




  • 法務局のウェブサイトで予約(10分)

  • 住民票を取得(30分)

  • 申請書をダウンロードして記入(15分)




ステップ3:予約日に法務局へ行く




  • 書類を持って法務局へ(30分)

  • 手数料3,900円を支払う

  • 保管証を受け取る



完了!安心が手に入ります


完璧を求めず、まずは一歩を




✓ 間違えたら書き直せます

何度でもやり直せます。完璧を目指さなくて大丈夫。

✓ 後から公正証書遺言に変えてもOK

まず自筆証書遺言で遺言書を作り、後で公正証書遺言に作り直すこともできます。

✓ 財産が少なくても意味があります

財産の多少に関わらず、あなたの想いを伝えることに意味があります。

✓ 若くても早すぎることはありません

突然の事故や病気はいつ起こるかわかりません。元気なうちに作ることが大切です。


不安な方は専門家にご相談を



「自分で書けるか不安」「内容が複雑で困っている」という方は、行政書士に相談してください。以下のサポートが受けられます:


  • 遺言書の文案作成

  • 財産目録の作成

  • 法務局保管申請のサポート

  • 相続税への配慮

  • トラブル防止のアドバイス



行政書士への依頼費用の目安:

  • 初回相談:無料〜5,000円

  • 自筆証書遺言の文案作成:3万円〜5万円

  • 法務局保管申請サポート:1万円〜3万円



※費用は事務所により異なります




「いつか書こう」と思っているうちに、
時間だけが過ぎていきます。


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  • 「書いた遺言書が有効か確認してほしい」

  • 「相続税が心配」



無料相談の流れ



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ひろさわ行政書士事務所

〒501-0236 

  岐阜県瑞穂市本田1552-112


090-4084-1493


営業時間:平日 9:00 ~18:00

(土日祝日・夜間は事前予約制)

対応エリア:瑞穂市、本巣市、

      大垣市、岐阜市ほか






最後に



遺言書は、あなたが家族に残せる最後の想いです。

「財産を誰にどう残すか」という形式的なことだけでなく、「なぜそう考えたのか」という想いも、付言事項として書き添えることができます。


付言事項の例:
「長年私を支えてくれた妻には、この家で安心して暮らしてほしい。子どもたちには、お母さんを大切にしてほしい。」
「長女には介護で苦労をかけた。その感謝の気持ちを込めて、少し多めに残したいと思う。他の子どもたちには理解してほしい。」
「お世話になった○○団体に寄付をしたい。少しでも社会の役に立ててもらえれば嬉しい。」


付言事項には法的効力はありませんが、あなたの想いが伝わることで、相続人同士のトラブルを防ぐことができます。


完璧な遺言書を作ろうとせず、
まずは「遺言書がある」状態を作りましょう。

あなたの大切な家族のために。
今週末、最初の一歩を踏み出してください。