こんな方に読んでほしい記事です
障害のあるお子さんを育てる親御さんにとって、「自分たちが亡くなった後、この子はどうなるのだろう」という不安は、常に心のどこかにあるものです。特に経済面での心配は大きく、働くことが難しいお子さんの生活をどう支えるかは重要な課題です。
この記事では、親亡き後の経済的な支えとなる「障害年金」について、制度の基礎知識から準備すべきこと、手続きの進め方まで、わかりやすく解説します。今からできる準備を知ることで、お子さんの将来への不安を少しでも軽減していただければと思います。
障害年金は、病気やケガによって生活や仕事に制限を受ける方を経済的に支援する公的年金制度です。20歳前に障害の原因となった傷病がある場合、20歳になった時点で一定の障害状態にあれば、保険料の納付要件を問わず「障害基礎年金」を受給できる可能性があります。
障害年金は「障害があるから必ずもらえる」ものではなく、あくまで国の定める障害状態に該当するかどうかで決まります。そのため、準備と記録が非常に重要です。
| 等級 | 年金額(年額) | 月額換算 | 障害の状態の目安 |
|---|---|---|---|
| 1級 | 1,039,625円 | 約86,635円 | 日常生活に常時介助が必要 |
| 2級 | 831,700円 | 約69,308円 | 日常生活に著しい制限がある |
子の加算について:受給者に生計を維持されている18歳到達年度の末日までの子(または20歳未満で障害等級1級・2級の子)がいる場合、子の加算が加わります。
・第1子・第2子:各239,300円/年
・第3子以降:各79,800円/年
※20歳前障害による障害基礎年金には所得制限があります(後述)。
障害年金の対象となるのは、身体障害だけではありません。
「親亡き後問題」とは、障害のある子どもを持つ親が亡くなった後、その子どもの生活をどのように支えていくかという課題です。特に経済面での不安は大きく、働くことが難しい場合、安定した収入源の確保が重要になります。
障害年金は、親亡き後の経済的な基盤となる重要な制度です。月額6万円から8万円程度の安定収入は、他の福祉サービスや貯蓄と組み合わせることで、お子さんの生活を支える大きな柱となります。
なぜ早めの準備が重要なのか
障害年金の請求には、過去の診療記録や診断書が必要です。医療機関によっては古いカルテが破棄されていることもあり、20歳になってから慌てて準備を始めると、必要な書類が揃わない可能性があります。今のうちから計画的に準備することが、確実な受給につながります。
20歳前から障害がある場合、20歳の誕生日の前日から障害年金を請求できるようになります。ただし、実際には診断書の取得や書類準備に時間がかかるため、20歳到達の数ヶ月前から準備を始めることが重要です。
実務上のアドバイス:「20歳の誕生日前日から請求可能」とはいえ、その日にいきなり請求するのは現実的ではありません。診断書は20歳到達日前後3ヶ月以内の現症日のものが必要ですので、計画的に準備を進めましょう。診断書の「現症日」が要件を満たしていない場合、書類が受理されないことがあります。その場合は医師に書き直しをお願いする必要がありますが、年金の診断書作成は医療機関でも一般的な手続きなので、遠慮する必要はありません。
| 時期 | 準備すべきこと | 目的 |
|---|---|---|
| 幼児期〜学齢期 |
継続的な通院と記録の保管 |
将来の請求に必要な証拠を残す |
| 中学・高校時代 |
診断書作成を依頼できる医師の確保 |
請求準備の本格化 |
| 18歳〜19歳 |
診断書の依頼時期の確認 |
20歳到達時にスムーズに請求 |
| 20歳到達前後 |
診断書の取得(3ヶ月以内) |
障害年金の受給開始 |
障害年金の請求では、障害の原因となった病気やケガで初めて医師の診察を受けた日(初診日)を証明することが非常に重要です。
保管すべき書類:
20歳到達時に診断書を書いてもらう必要があるため、継続的な通院と医師との良好な関係が重要です。できれば同じ医療機関で長期的に診てもらうことで、お子さんの状態を正確に把握してもらえます。
この書類は、発病から現在までの経過や日常生活の状況を詳しく記載するものです。今から記録をつけておくことで、いざという時に困りません。
記録しておくべき内容:
| 書類名 | 入手先 | 備考 |
|---|---|---|
| 年金請求書 | 年金事務所 | 指定の様式に記入 |
| 診断書(精神・知的障害用または肢体用など) | 医療機関 | 現症日が20歳到達日前後3ヶ月以内 |
| 病歴・就労状況等申立書 | 自分で作成 | 発病から現在までの詳細な記録 |
| 受診状況等証明書 | 初診時の医療機関 | 初診日を証明(診断書と同じ病院なら不要) |
| 戸籍謄本または戸籍抄本 | 市区町村役場 | 請求日前1ヶ月以内のもの |
| 住民票 | 市区町村役場 | 世帯全員分、マイナンバー記載なし |
| 所得証明書 | 市区町村役場 | 前年の所得を証明(20歳前障害の場合) |
| 年金手帳または基礎年金番号通知書 | 本人保管 | 基礎年金番号の確認 |
| 銀行の通帳またはキャッシュカードのコピー | 本人保管 | 年金受取口座の確認 |
失敗例1:初診日が証明できない
初診から年数が経過していると、医療機関にカルテが残っていないことがあります。早い段階で「受診状況等証明書」を取得しておくか、その代わりとなる資料(診察券、お薬手帳など)を保管しておきましょう。
※初診日とは「障害の原因となった症状で、はじめて医療機関を受診した日」です。後から別の病名がついても、最初の症状で受診した日が初診日になります。
失敗例2:診断書の内容が不十分
医師が日常生活の困難さを十分に理解していないと、実態より軽い診断書になってしまうことがあります。診断書作成前に、日常生活での具体的な困りごとをメモにまとめて医師に伝えましょう。
失敗例3:病歴・就労状況等申立書が簡素すぎる
この書類は審査で重要視されます。「特になし」「問題なし」といった記載ではなく、具体的なエピソードを交えて詳細に記載することが大切です。
20歳前の障害による障害基礎年金には所得制限があり、受給者本人の前年の所得が一定額を超えると、年金の一部または全部が支給停止になります。
所得制限の基準額(2025年度・扶養親族等の数により異なる):
重要:未成年の間は親の所得は関係ありません。20歳以降は本人の所得のみが判定対象となります。ただし、多くの障害のあるお子さんの場合、所得が基準額を超えることは少ないため、過度に心配する必要はありません。
障害年金の請求は、制度が複雑で書類も多岐にわたるため、専門家のサポートを受けることで認定の可能性を高めることができます。
相談を検討すべきタイミング:
| 項目 | 自分で行う場合 | 専門家に依頼する場合 |
|---|---|---|
| 書類作成 |
手探りで進める必要がある |
経験に基づいた適切な記載 |
| 診断書の確認 | 内容が適切かわからない |
不足や誤りをチェック |
| 初診日の証明 | 証明方法がわからず諦める |
様々な方法を駆使して証明 |
| 不支給時の対応 | 諦めるか、再度挑戦するか迷う |
審査請求など不服申立てを検討 |
| 心理的負担 | 手続きのストレスが大きい |
安心して任せられる |
親亡き後の生活を支えるためには、障害年金の受給が大きな柱となります。ただし、障害年金の申請手続きは社会保険労務士の独占業務であり、行政書士が代行することはできません。当事務所では、手続きの流れや必要書類のポイントをわかりやすくご説明したうえで、信頼できる提携社労士をご紹介し、スムーズに申請できるようサポートいたします。
親亡き後に備えるための全体設計は、行政書士の立場からしっかりとお手伝いします。
専門家への報酬は発生しますが、確実に受給できれば生涯で数千万円の年金を受け取ることができます。また、不支給を防ぐことや、適切な等級で認定されることの価値は大きいといえます。
報酬体系の一般例:着手金なし、成功報酬として初回支給額の10〜15%程度が一般的です(事務所により大きく異なります)。不支給の場合は報酬が発生しない完全成功報酬制を採用している事務所もあります。
重要:契約前に必ず見積もりを取り、報酬体系を明確に確認してください。事務所によって料金設定は大きく異なりますので、複数の事務所を比較検討することをお勧めします。
A. いいえ、療育手帳がなくても受給できます。ただし、療育手帳は障害の程度を示す参考資料となるため、取得していると請求時に有利です。
A. 特別児童扶養手当と障害年金は別の制度で、判定基準も異なります。特別児童扶養手当を受給していても、障害年金は別途申請して審査を受ける必要があります。ただし、受給している事実は参考資料になります。
A. 20歳の誕生日の前日から請求可能です。それより前には提出できませんが、事前に書類を準備しておくことは可能です。
A. はい、受給できる可能性があります。発達障害による日常生活や就労への支障が認められれば、障害年金の対象となります。診断書と病歴・就労状況等申立書で具体的な困難さを示すことが重要です。
A. はい、可能です。不支給決定に対しては「審査請求」という不服申立てができます(決定から3ヶ月以内)。また、状態が悪化した場合や、新たな医療記録が揃った場合には、再度請求することもできます。
A. 障害の種類によって異なります。知的障害や発達障害は精神科、身体障害は整形外科や小児科など、お子さんの状態を継続的に診ている専門医に依頼するのが最適です。
A. はい、働いていても受給できる場合があります。フルタイムで一般就労している場合、特に配慮や支援なく通常の業務をこなせていると、障害の程度が軽いと判断され不支給となるケースがありますが、職場での配慮の状況や業務内容、日常生活での支障などが総合的に判断されます。
□ すぐにできること(今日〜1週間以内)
□ 近いうちにやること(1ヶ月以内)
□ お子さんが15歳以上の場合(できるだけ早く)
□ お子さんが18歳以上の場合(早急に)
お子さんの年齢や状況によって、優先すべきことは異なります。
お子さんが小さい場合(10歳未満):
まずは医療記録の保管を徹底し、継続的な通院を心がけてください。今の段階では、将来に備えて記録を残すことが最も重要です。
お子さんが10代前半の場合(10〜14歳):
そろそろ具体的な準備を始める時期です。これまでの通院歴を整理し、かかりつけ医との関係を大切にしてください。療育手帳などの取得も検討しましょう。
お子さんが10代後半の場合(15〜19歳):
本格的な準備の時期です。できるだけ早く専門家に相談し、20歳到達時にスムーズに請求できるよう計画を立てましょう。
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