特定技能1号を初めて受け入れる事業者のための準備完全ガイド
「特定技能外国人を受け入れたいけれど、何から始めればいいのかわからない」「必要な手続きや準備が複雑で不安」――初めて特定技能1号の受け入れを検討する事業者の多くが、このような悩みを抱えています。
特定技能制度は人手不足解消の有効な手段ですが、受け入れには様々な要件があり、準備を怠ると受け入れができなかったり、後々トラブルに発展したりする可能性があります。
この記事でわかること:
特定技能1号は、2019年4月に創設された在留資格で、人手不足が深刻な産業分野において、一定の専門性と技能を持つ外国人材を受け入れるための制度です。技能実習制度と異なり、即戦力となる人材の確保を目的としています。
2024年3月に4分野が追加され、現在は以下の16分野が対象となっています。介護、ビルクリーニング、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、自動車運送業、鉄道、林業、木材産業です。
素形材とは:金属やプラスチックなどの素材に熱や圧力を加えて形を与えた部品や部材のことです。自動車のエンジン部品(鋳物)やボディ部分の金属プレス品などが該当します。2022年5月に製造3分野(素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業)が統合され、現在は1つの分野として運用されています。
日本の労働人口は減少の一途をたどり、多くの業種で深刻な人手不足が続いています。特定技能制度は、技能実習と比べて就労制限が少なく、転職も可能なため、外国人材にとっても魅力的で、安定的な人材確保が期待できます。実際、2024年時点で特定技能外国人の在留者数は20万人を超え、2024年3月には新たに4分野(自動車運送業、鉄道、林業、木材産業)が追加されるなど、制度はさらに拡大しています。
トラブル内容:建設業を営むA社は、特定技能外国人の受け入れ準備を進めていましたが、建設分野特有の協議会への加入手続きを知らずに進めていました。在留資格申請の直前になって協議会加入が必要と知り、急いで手続きをしたものの、加入には一定の審査期間が必要で、予定していた受け入れ時期が3ヶ月遅れてしまいました。
影響:内定していた外国人材は待てずに他社へ、新たな採用活動で追加コストが発生
トラブル内容:介護施設のB社は、特定技能外国人を受け入れたものの、義務付けられている定期的な面談や生活オリエンテーションを適切に実施していませんでした。外国人材からの相談体制も不十分で、入管からの調査により行政指導を受け、改善報告書の提出を求められました。
影響:新規受け入れが一時停止、企業の信用低下、支援体制の再構築にコストと時間が必要に
トラブル内容:製造業のC社は、雇用契約書の内容を外国人材が十分に理解しないまま受け入れを開始。残業時間や休日出勤について認識の齟齬があり、外国人材が不満を抱いて早期退職してしまいました。
影響:再度の採用活動が必要に、他の外国人材への影響、SNSでの悪評により採用困難に
これらのトラブルを放置すると、以下のような深刻な事態を招きます。
特定技能1号の受け入れは、準備から受け入れ開始まで通常3〜6ヶ月程度かかります。以下、ステップごとに解説します。
まず、自社が特定技能外国人を受け入れられる要件を満たしているか確認します。
業種によっては、特定の協議会や団体への加入が必須です。加入手続きには審査期間が必要なため、早めの対応が重要です。詳細は次章で解説します。
特定技能外国人に対する支援計画を作成します。自社で支援する場合と登録支援機関に委託する場合があります。
地方入国管理局に在留資格認定証明書交付申請を行います。審査期間は通常1〜3ヶ月程度です。
在留資格認定証明書が交付されたら、外国人材が本国で査証(ビザ)を取得し、入国します。入国後、支援計画に基づいて各種手続きと支援を実施します。
特定技能外国人を受け入れる際、業種によっては特定の協議会や団体への加入が義務付けられています。以下、主要5業種の例を示します。
| 業種 | 団体名 | 加入時期 | 主な要件・費用 |
|---|---|---|---|
| 建設 | 建設特定技能受入事業者協議会(国土交通省) | 受け入れ開始後4ヶ月以内 |
年会費:24,000円 |
| 自動車整備 | 自動車整備分野特定技能協議会(国土交通省) | 受け入れ開始後4ヶ月以内 |
加入費用:無料 |
| 介護 | 介護分野における特定技能協議会(厚生労働省) | 受け入れ開始後4ヶ月以内 |
加入費用:無料 |
| 農業 | 農業特定技能協議会(農林水産省) | 受け入れ開始後4ヶ月以内 |
加入費用:無料 |
| 造船・舶用工業 | 造船・舶用工業分野特定技能協議会(国土交通省) | 受け入れ開始後4ヶ月以内 |
加入費用:無料 |
注意:協議会への加入申請には、会社の登記事項証明書、事業の許認可証、雇用契約書など、様々な書類が必要です。業種によって必要書類が異なるため、事前に確認することが重要です。
| 書類名 | 内容・注意点 |
|---|---|
| 在留資格認定証明書交付申請書 | 所定の様式、申請人と受入企業の情報を記載 |
| 特定技能外国人の履歴書 | 写真付き、学歴・職歴の詳細 |
| 技能試験・日本語試験の合格証明書 | 分野別の技能評価試験とJLPT N4以上または国際交流基金日本語基礎テスト |
| 雇用契約書 | 日本人と同等以上の報酬、労働時間等を明記 |
| 特定技能雇用契約に係る説明書 | 外国人が理解できる言語で作成 |
| 1号特定技能外国人支援計画書 | 10項目の義務的支援を具体的に記載 |
| 登録支援機関との支援委託契約書 | 登録支援機関に委託する場合 |
| 会社の登記事項証明書 | 発行後3ヶ月以内のもの |
| 決算書類 | 直近2年分の貸借対照表・損益計算書 |
| 労働保険・社会保険の加入証明書 | 納付証明書、領収書など |
| 協議会の構成員証明書 | 業種によって必要 |
| 特定技能所属機関概要書 | 会社の事業内容、従業員数等 |
| 項目 | 期間 | 費用目安 |
|---|---|---|
| 協議会加入 | 1〜2ヶ月 | 無料〜24,000円/年(業種による) |
| 外国人材の採用 | 1〜2ヶ月 | 人材紹介の場合:30万円〜80万円 |
| 在留資格申請 | 1〜3ヶ月 | 収入印紙代等:数千円(行政書士依頼の場合別途) |
| 登録支援機関への委託 | - | 月額2万円〜4万円/人 |
| 住居費用 | - | 敷金・礼金・家賃(地域による) |
| その他初期費用 | - | 生活必需品、通訳費等:10万円〜 |
| 項目 | 自社で対応 | 行政書士に依頼 |
|---|---|---|
| 時間・労力 | 担当者が本業と並行して対応、膨大な調査と書類作成が必要 | 打ち合わせと書類提供のみ、本業に集中できる |
| 専門知識 | 法令や要件の理解に時間がかかる、誤解によるミスのリスク | 最新の法令と実務経験に基づく確実な対応 |
| 書類の正確性 | 不備による差し戻し、再提出のリスク | 事前チェックにより不備を防止、一発許可率が高い |
| 申請期間 | 書類準備に時間がかかり、全体スケジュールが長期化 | スムーズな準備で最短期間での申請が可能 |
| 費用 | 人件費のみ(ただし機会損失あり) | 報酬が発生(10万円〜30万円程度) |
| トラブル対応 | 追加質問や不許可時の対応が困難 | 入管とのやり取りを代行、問題解決まで伴走 |
当事務所の特定技能受け入れサポートサービス
特定技能外国人の受け入れを検討し始めた段階で、できるだけ早くご相談いただくことをお勧めします。受け入れ希望時期の6ヶ月前が理想的です。早期に相談することで、以下のメリットがあります。
Q1. 特定技能1号と技能実習の違いは何ですか?
特定技能1号は即戦力となる人材の就労を目的とした在留資格で、転職が可能です。一方、技能実習は技能移転を目的とした制度で、原則として転職はできません。また、特定技能は技能試験と日本語試験の合格が必要ですが、より自由度の高い働き方が可能です。報酬も日本人と同等以上が求められ、労働者としての権利がより明確に保護されています。
Q2. 小規模事業者でも受け入れは可能ですか?
はい、可能です。従業員数による制限はありません。ただし、労働関係法令や社会保険の適切な加入、適切な報酬の支払いなど、基本的な要件を満たす必要があります。また、支援体制については登録支援機関に委託することで、小規模事業者でも対応可能です。当事務所でも登録支援機関のご紹介が可能です。
Q3. 受け入れにかかる総費用はどのくらいですか?
ケースによって異なりますが、初年度は1人あたり100万円〜200万円程度が目安です。内訳は、人材紹介費(30万円〜80万円)、行政書士報酬(10万円〜30万円)、登録支援機関への委託費(年間24万円〜48万円)、住居費用、協議会費用、その他初期費用などです。2年目以降は、登録支援機関への委託費と協議会費用が主な継続費用となります。
Q4. 日本語能力はどの程度必要ですか?
基本的には日本語能力試験(JLPT)N4レベル以上、または国際交流基金日本語基礎テストの合格が必要です。N4は「基本的な日本語を理解できる」レベルで、簡単な日常会話ができる程度です。ただし、技能実習2号を良好に修了した外国人は、試験が免除されます。介護分野ではN4では不十分な場合もあり、実務ではより高い日本語能力が求められることがあります。
Q5. 在留期間はどのくらいで、更新は可能ですか?
特定技能1号の在留期間は、1年、6ヶ月、4ヶ月のいずれかで許可され、通算で最長5年まで在留できます。更新は可能ですが、その都度審査があり、適切な雇用と支援が継続されているかがチェックされます。更新時には雇用契約の継続、支援実施状況の報告、協議会への加入継続などが確認されます。
Q6. 受け入れ後に注意すべきことは何ですか?
特定技能外国人を受け入れた後は、以下の点に注意が必要です。(1)四半期ごとの出入国在留管理庁への届出、(2)3ヶ月に1回以上の定期面談の実施、(3)支援計画に基づいた継続的な支援、(4)協議会への活動状況報告、(5)労働条件の遵守と適切な給与支払い。これらを怠ると行政指導の対象となり、新規受け入れができなくなる可能性があります。
Q7. 海外から直接採用することはできますか?
はい、可能です。海外在住の外国人を直接採用する場合は、現地で技能試験と日本語試験に合格している必要があります。採用後、日本で在留資格認定証明書を取得し、外国人が本国で査証(ビザ)を申請して入国します。ただし、人材紹介会社を通じた採用が一般的で、現地での面接や契約手続きのサポートを受けられます。国内在住者(留学生や技能実習修了者など)の採用も可能です。
特定技能1号の受け入れは、適切な準備と手続きを踏めば、事業の人手不足解消に大きく貢献します。以下のステップで行動を開始しましょう。
当事務所では、特定技能1号の受け入れに関する初回無料相談を実施しています。
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